サマータイム、あるいは「オリンピックタイム」とでも言うべき制度。まさか導入されるとは思ってはいませんが、昨今の情勢を見る限り、明確に「反対」の声を上げていかなければいけないのかなとも思います。

もちろん広義の(本来の?)サマータイムそのものに反対というわけではありません。省エネや労働効率に効果があり、十分な準備期間があるのであれば、賛成します。しかし1年もないという準備期間で、なおかつ2時間も時計を変更するというのはリスクが高いと感じています。

Jリーグの一部のナイトゲーム(とりわけ維新みらいふスタジアムで開催されるナイトゲームのほぼ全て)は、午後7時がキックオフ時間に設定されています。

実は午後7時であっても、ウォーミングアップ段階では非常に暑く、「もっと遅くてもいいのでは」という声が選手から聞こえてくるほど。今の時計でも、午後8時キックオフがあってもおかしくはありません。

20180813_サマータイム説明図

ところが「サマータイム」が導入されると、午後7時は現在の『午後5時』になってしまい、暑くてとても試合はできません。山口市の今の時計での午後5時は気温が32度前後あり、日差しも強く、スポーツをするには危険。お客さんの安全も確保できません。

最低限、現在の午後7時の天候(気温29度ほど)に合わせる必要があります。午後7時は新時間では「午後9時」。これが大きな問題です。午後9時に試合を開始すると、終了は午後11時頃になってしまいます。ここまで夜が深くなってしまうと、サポーターにとっては翌日の仕事や学校に差し支えますし、公共交通機関は動いていないかもしれません。手前側の話になりますが、新聞は締め切りに間に合わないでしょう。仮にも午後9時でも暑いとなると、午後10時開始、午前0時終了というのもあり得ない話ではありません。

 
今年のような酷暑が続くと、サッカーの開催シーズンをどうするかという議論(いわゆる秋春制の検討)もしなければなりませんが、まだそれは道半ば。来年も春にシーズンが始まり、問題の夏場を経て、秋にシーズンが終わっていきます。

従ってサマータイム期間にも試合が行われます。どうやって午後9時開始という事態に対応すべきなのでしょう。深夜帯に施設が使えるのかどうか。周辺への騒音は大丈夫なのか。公共交通機関との調整はできるのか。来場に影響は出ないのか。仮に雷雨などで試合開始が遅れた場合にてっぺん越えは許されるのか。

細かな問題もたくさんあります。例えば深夜になったら点滅信号になったり、赤青の時間が変わる信号機があります。これがスタジアムの駐車場周辺にもあると、本来は心配しなくてもいいような事故や渋滞を気にしなければなりません。警察や行政との調整が必要になってきます。

深夜に施設を特別利用する場合、その費用は誰が負担するのかという問題も出てきます。ほかにも、ボールパーソンを高校生や大学生に協力してもらっているケースは多いですが、帰宅があまりにも遅くなるのであれば、学校との話し合いをしなければならないでしょう。学校側が首を横に振れば、今度はまた新たなボールパーソンを探さなければなりません。

こんな心配もあります。午後7時開始でも、スタッフの大半は午前0時前後まで仕事が残っています(業務内容によってはもっと遅い人もいます)。それが午後9時開始になると、そのままスライドして午前2時頃に終了。とはいえ朝9時には出勤しなければならない仕事も必ずあります。ただでさえ「ブラック」というそしりを受けやすいサッカー界。さらに現場が過酷になりそうです。

労務管理を含め、大なり小なり調整すべきポイントをすべて洗い出し、一つ一つ調整し、試合開催を可能にしていくには、かなりの時間が必要です。実施するなら実施するで早めに決めてもらいたいところですが、秋の臨時国会を待っての決定だとすると、相当に遅れそうです。

いずれにしても、午後9時開始というのは人間の生活リズムを考えてもポジティブな受け止めはできません。午後7時(現在の午後5時)開始ももちろん酷暑下ですので、サッカーをやっている場合ではないでしょう。

 
一番に考えなければならないのは、東京から遠い遠い山口や北九州の子どもたち(やサポーター)は、必ずしも全員がオリンピックを見に行くわけではないという点です。いつもスポーツ観戦を楽しみにスタジアムに来てくれているみなさんが、遠くのオリンピックのために、オリンピックよりも身近に存在するプロスポーツを観戦できないという事態は絶対に避けたい。仮にもサマータイムが導入されるなら、そういう状況に陥らないようクラブは最大限の努力をしていくと思いますが、あまりにもむなしい作業にも思えます。

 
サマータイム期間のJリーグ開催を避けて、長いサマーブレイクを入れるというのも手段かもしれません。ただそれをしてしまうと、シーズンインやシーズンアウトが真冬にいっそう近くなり、雪国のクラブに不利が生じます。開催時期の大きな変更は、国際的な移籍ウインドーとの兼ね合い、選手契約、スポンサー契約などにも影響を及ぼします。春や秋の試合日程はさらに過密になり、ルヴァン杯や天皇杯の日程調整はさらに難しくなるでしょう。今から準備して来年実施というのはかなりの難題です。

 
日本は夏は昼間の時間が長く、なおかつ蒸し暑いという気候。サマータイムそのもののメリットがあまりない国と言えます。多大な犠牲や努力を強いるようなサマータイム(それも2時間)を、急いで導入する必要があるのかどうか。疑問ばかりが残るのです。