20160725_1


(最近、電車移動が多いので、週に1冊は読み終えてる。どんどん積んでる本が減ってるぜ)

本棚にある恩田陸さんの本を数えていくと、これが18冊目。引っ越しのときに処分したものもあるだろうから、やはり最も読んでいる作家の一人だろうと思う。


 
 恩田 陸
  「黄昏の百合の骨」

 

本作は10年以上前に世に送り出された。前作「麦の海に沈む果実」と若干の関連性はあるものの、「一編のサスペンスフルなミステリとして、確固たる整合性を持っている」(解説,篠田真由美)ため、それを読んでいる必要はない。舞台も「麦の海―」とは異なり、現実にある長崎市。高台にある謎めいた洋館で、さまざまな人間模様が交差する。

 
主人公は女子高生だ。そういう風に書くと俗っぽいものになってしまうが、恋愛小説ではないのでご安心あれ。とはいえお年頃な女の子をヒロインにするとき、読み手はなんとなく彼女に純白性を期待する。しかしそこは恩田陸。けたけたと笑って想像を交わしてくる。ヒロインの本来の姿は洋館と同じように謎めいていて、大人びていて、あるいは、もう老婆のように人生を諦観していて…。

 
ああ、そうだ。あなたの高校時代を振り返ってほしい。学校のちょっとしたイベント。クラスの些細ないさかい。帰り道、夕陽を浴びている時。本屋での会話。なんとなく、自分が役者になっていた瞬間はなかっただろうか。怒る友達をなだめる役。逆にキレる役。ちょっとませた会話をしている自分。そういった「役」「役回り」に酔っていたこと、たぶんあるんじゃないかなと思う。

そういうことがあったなぁと思い至る人には本作はおすすめ。きっとヒロインもそういう人間なんだろう。少女と大人の端境期にあり、時に少女を、時に背伸びした大人を演じている。そんな揺れる「役者」が謎解きに挑む。

 
 
一カ所、ヒロイン――役者――の言葉を引用してみる。彼女はこんなことを言う。

 
  幸福というのは、なんとグロテスクなものだろう。

 
確かに幸福はグロテスクかもしれない。でも、恩田陸さん、「黄昏の百合の骨」なんていう書名も、ひどくグロテスクなんですよ。いや、グロテスクなものにこそ、人は惹かれるのかもしれないけれど。

 
 
 文庫:
   講談社文庫(本体648円=購入時)
   2007年4月13日発行
 単行本:2004年3月,講談社