10年くらい積まれたままだった本。
唯川 恵
「さよならをするために」
20代前半の女性(しかもバブル期!)をヒロインとした恋と失恋の短編が5作収録されている。1989年に集英社から単行本が出て、文庫化は1995年。私が手にしたのは2002年の第30刷だ。
装丁の感じからして、まだこれから上がるとも下がるとも知れぬ作者への警戒感が伺える(=それほどお金や時間を掛けている感じではない)が、02年当時で「30刷」ということからして、いい意味でそれが裏切られたと言えるだろう。
私は高校時代、唯川さんの作品をかなり読み込んでいたのだが(キャラに合わないがw)、彼女のマイルストーンたる短編集は後回しになっていた。
そうして2016年の今、1989年までに作られた短編のミックスを読んでみると、意外なほど色褪せずに輝いていることに驚かされる。時代背景はバブルだし、登場人物の恋愛はたどたどしい。だけどつんのめることなく読み切ってしまった。長く活躍し続ける作者の、線のような文章の美しさがそうさせるのかもしれないし、持って生まれたセンスかもしれない。佳作。Bravo。
とはいえ本作に限れば20代が読むべき本でもある。30歳を過ぎた人が読むには少し感情を入れるのに難しさがある。でも本作を読みながら思い出に浸り、古傷をなめるのもまた人生と読書の楽しさ。青春を忘れた世代にもおすすめしよう。
まぁ、わたしみたいは19さいが読むには若すぎt..(以下略
登場人物のコメントを最後に。
「あなたは恋を教えてくれたわ。そして恋を捨てることも」
うへぇ~! こんなセリフ、言ってみたいわぁっ!&言われたi... って、待て待て待て。言われちゃあかん・・・(笑
文庫:
集英社文庫(本体448円=購入時)
1995年6月25日発行
単行本:1989年10月,集英社
お隣は恩田陸さんの作品。
恩田 陸
「私と踊って」
こちらも短編集。特にテーマが決まっているというものではないが、作者の仕事がぎゅっと詰まったある種のコンピレーションアルバムのようなもの。ベストアルバムではなくて、いろんなジャンルから作品を持ってきた感じなので、コンピレーション(編んだもの)という表現のほうが近いだろう。
横書きあり、字体替えあり、(文庫なのに)紙質替えあり。なんでもありの楽しさあふれる一冊。
文庫:
新潮文庫(本体630円)
2015年5月1日発行
単行本:2012年12月,新潮社